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日別アーカイブ: 2025年10月15日

建築板金雑学講座

皆さんこんにちは!
有限会社銅春、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~雨仕舞い・納まり・美観を同時にかなえる実践知 ️~

 

建築板金は、屋根・外壁・樋・役物で建物の「皮膚」をつくる仕事。雨や風、紫外線、温度変化から躯体を守りつつ、街並みに調和する表情(ファサード)をデザインする“機能美”の世界です。図面の一本線を、実物の折り・曲げ・留め・シールに翻訳する現場力こそが品質を決めます。本稿では、素材選定→加工→取り付け→検査→維持までを横断し、今日から現場で効くコツをまとめました。‍♂️


1️⃣ 素材選定の基本:耐久・意匠・加工性の三立 ⚖️

  • ガルバリウム鋼板(SGL含む):耐食◎、軽量、コスパ良し。沿岸・工業地帯ではSGLや厚膜塗装で一段上の耐久を。

  • ステンレス(SUS304/316):薬品・塩害に強い。加工硬化に注意し、曲げRをケチらない。

  • :経年変化の緑青が魅力。異種金属接触腐食に要注意。

  • チタン・アルミ:軽量・耐食。専用工具と曲げ条件を守り、バネ戻りを読んだ型設計を。✈️
    Tip:意匠色は日射反射率/耐候塗膜で選ぶ。濃色は熱歪みが出やすいので、固定ピッチとスリットで逃げを入れる。


2️⃣ 屋根納まりの原則:水は“重力”で動く ⬇️

  • 勾配:横葺きは最低1/30、立平は1/50が目安(メーカー仕様最優先)。微勾配こそ重ね寸法・二次防水をシビアに。

  • 水上→水下の順で施工。重ね代は流れ方向へ

  • ケラバ:風を拾う。返し(ハゼ)高さビスの風下配置で剥離を防止。️

  • 棟包み:通気を妨げず、防水紙立上げを確実に。雨返しの折り代5〜10mmで毛細上昇を止める。
    NG例:棟の空気層に断熱材を詰めてしまい、結露→腐れ。通気経路の連続性を図面で確認。


3️⃣ 外壁の要所:通気層と開口部で決まる ️

  • 通気層:18〜24mm程度を確保。上下の入排気胴縁割付を連続させる。

  • 開口部:サッシ三方の水返し、下端のドレイン孔、四隅の三面接着NG

  • 見切り:材の異種取り合い(木・RC・ALC)は可動ジョイントバックアップ材で追随性を。
    Tip:外壁の縦ハゼは見付が揃うラインで止める。役物の“影”を味方に、ジョイントをデザインに昇華。


4️⃣ 役物(やくもの)設計:5mmの攻防が仕上がりを変える

  • 水切り:出幅は仕上げ厚+10〜15mm。先端はハネを付け、滴を壁面から逃がす。

  • 見切り・笠木:笠木は天端勾配ジョイントキャップ+二重防水。端部の毛細切り込みで吸い上げ抑制。

  • 入隅・出隅:現場曲げか既製コーナーか、メンテ難易度で選ぶ。
    失敗学:役物の逃げ寸法不足で熱伸縮クラック。スリット/スライド金具で伸縮吸収を仕込む。


5️⃣ 加工の勘所:折り・曲げ・切りのクオリティ

  • 折り:折り代は材厚×(係数)。鋼板t0.4で7〜8mmが目安。ハゼは立ち上げ高さ10〜13mmで防水と美観を両立。

  • 曲げ:最小Rは材質依存。ステンはR大きめ、銅は小さめ可。曲げ順序で面傷を出さない。

  • 切り:電動すきは塗膜バリに注意。紙テープ養生+パネルソーで見付面を守る。
    Tip:曲げ後の“バネ戻り”は治具でオーバー気味に作り、現場でピタ止め。


6️⃣ 固定と下地:見えないところで差がつく

  • ビスピッチ:仕様書の範囲内で風荷重・熱伸縮を計算。端部は密、野中は粗の“メリハリ”。

  • 座金・防水パッキン:締め込みすぎNG。扁平率で管理し、頭部シーリングは最小限。

  • 下地:木下地は含水率。ALCにはプラグ・ケミカルアンカーを適材適所。
    ケース:沿岸部の外壁でビス錆。→ステン頭+止水座金+下穴径適正化で再発ゼロへ。️


7️⃣ シーリング設計:二面接着と逆Lの思想

  • 二面接着:バックアップ材で三面を防止。接着長厚みを図面にも明記。

  • プライマー:温湿度・可使時間を厳守。雨前/結露前は避ける。

  • 納まり:外装では**“逆L”形状で上からの水を受けない形に。
    Tip:同色より
    わずかに濃いシーリング色**は汚れが目立ちにくい。


8️⃣ 雨仕舞いの検証:水は必ず“試験”で裏切る

  • 散水試験:ジョイント・開口・役物周りを重点。負圧条件(送風)も再現。

  • 赤外線サーモ:裏側の湿りを可視化。初期不良を引き渡し前に潰す。
    失敗学:外壁の縦ジョイントの目地底割れバックアップ材径見直し+三角シールで解決。


9️⃣ 施工管理:写真とタグで“品質を残す” ️

  • 工程写真:下地→透湿防水シート→通気胴縁→役物→本体の順で定点撮影

  • タグ:材料ロット・ビス種・シール銘柄をQRで紐付け

  • チェックリストビス頭出・ハゼ高さ・端部返しなど“見えにくい不良”を数値化。
    効果:将来の点検で再現性が確保でき、クレームの盾にもなる。


安全と段取り:高所・風・熱を制す ️

  • 高所:手摺先行・親綱・フルハーネス。材料受け渡しは声出し合図を短く統一。

  • 10m/sで外装大判パネルは中断。保管は縦置き+帯締め

  • :夏場の金属屋根は想像以上に熱い朝・夕シフトで品質と安全を両立。


1️⃣1️⃣ メンテ設計:“直せる納まり”が最強 ♻️

  • ビス見える化:要所は露出固定+化粧キャップで将来の再締結を容易に。

  • 笠木・役物ジョイントで分割し、単品交換できる構成に。

  • 清掃性:樋の落葉対策、外壁の雨筋逃げを設計段階から。


1️⃣2️⃣ ケーススタディ:準沿岸の低層集合住宅 ️

  • 課題:塩害・強風・西日。

  • :SGL×高耐候塗膜、縦ハゼ外壁+通気24mm、開口は三方水返し+下端ドレイン

  • 結果:色褪せ・雨染み・ビス錆なし、10年点検で補修極小
    学び:素材と通気と役物の“三位一体”で長寿命化は実現する。


まとめ:建築板金は“機能をデザインする仕事” ✨️

水・風・熱・時間を相手に、ミリの折り数センチの余白で建物の寿命を左右する。図面・加工・施工・検査・メンテの環を回し続けることが、街の価値を quietly 高める最短ルートです。次回は意匠板金・リノベ・ZEB/ZEH対応まで踏み込み、売れる提案術を深掘りします。

 

 

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