
皆さんこんにちは!
有限会社銅春、更新担当の中西です。
さて今回は
~変遷~
雨仕舞いの匠から“外皮エンジニア”へ
建築板金は、屋根・外壁・雨樋・笠木・水切り・役物…建物の“雨を受け、流し、守る”部位を、金属板で形にする仕事です。素材・工法・道具・求められる性能は、社会の変化とともに大きく進化してきました。ここでは、現場視点で「何がどう変わったか」「これから何が要るか」を一気に整理します。
目次
昔:
寺社や洋館では銅板、住宅では**トタン(溶融亜鉛メッキ鋼板)**が主役。加工性に優れる一方、腐食・退色への備えが課題。
いま:
**ガルバリウム鋼板(Al-Znメッキ鋼板)**が標準に。塩害・酸性雨に強く、薄肉でも耐久性と成形性を両立。
**フッ素樹脂塗装(PVDF等)**で色あせ抑制、長期美観を実現。
意匠・海岸部にはステンレス、チタン、チタン亜鉛、アルミなどの高耐食・軽量素材を適材適所で選択。
これが意味すること:
素材選定は“色”だけでなく腐食環境・温度変化・熱伸縮の計算を含む“性能設計”。板金は意匠仕上げから外皮性能の要へ。
昔:
瓦棒葺き・波板が主流。現場で曲げ・叩き・嵌める手成形中心。
雨仕舞いは経験則に依存し、納まりは職人の引き出し勝負。
いま:
立平(縦ハゼ)・嵌合式立平・横葺き嵌合・はぜ折りが普及。クリップ固定+熱伸縮スライドで長尺でも破断を防ぐ。
外壁は金属サイディング/角波/スパンドレル/金属カセットが標準化。二重折り返し・差し込み・シール一次止水+二次防水の考え方が浸透。
屋根一体型太陽光(BIPV)や通気層付きの金属外皮で、断熱・通気・結露抑制を“外皮システム”として設計。
キーワード:
“一次止水×二次防水×通気排湿”。見切りと水返し、ドレイン経路の連続性が性能の要。
昔:
金切り鋏、ツカミ、ハゼ締め器、吊子…手道具で細部を作る“音と勘”の世界。
いま:
現場成形ロールフォーマーで40m級の長尺立平を“継ぎなし”で製造。
工場ではNCベンダー・CNCタレットパンチで役物を高精度量産。
計測はレーザー測量・ドローン写真測量で屋根寸法と勾配をデータで合意。
品質はトルク管理・膜厚計・色差計・画像検査で“言える化”。
結果:
段取りは紙からBIM/CAD図と拾い出し表へ。**歩留まり計算(ネスティング)**で端材を削減し、誤発注・やり直しを減らす時代。
昔:
主眼は漏らさないこと。風荷重・地震・結露は“現場合わせ”。
いま:
耐風圧・水密・気密・断熱・遮熱・遮音・防火を同時に満たす外皮。
熱橋(ヒートブリッジ)対策、通気層の設計、屋根裏の換気、遮熱塗装など建築物理の知識が必須。
伸縮・クリープに配慮し、固定ピッチ・クリップ仕様・エキスパンションを図面に明記。
海岸・工場隣接など腐食環境区分に応じた素材・塗膜選定が当たり前に。
昔:
高所作業は経験頼み、墜落・切創のリスクが常態。記録は少ない。
いま:
親綱・フルハーネス・先行手すり・仮設足場が前提。
製品保証と紐づくため、施工写真・検査記録・材料ロットの保存が必須。
防火区画・準耐火に合う不燃材下地・下葺き材の指定、屋根30分耐火の仕組み理解など法規対応力が価値に。
昔:
新築が中心。標準納まりで回転重視。
いま:
カバー工法(既存上から新設)や葺き替え、庇・笠木の改修が増加。
雨漏り診断→原因特定→改修設計→施工→保証をワンストップで提供する板金店が台頭。
景観・意匠の要件も高まり、立体曲面のハゼ葺き、丸波のR納まり、特注笠木の長尺シーム溶接など、**“美しく納める技術”**が差別化に。
昔:
廃材は産廃へ。環境は“意識”。
いま:
材料LCA(CO₂原単位)やEPDの提示、リサイクルルートの整備、梱包材のリターナブル化が発注要件に。
高反射(クールルーフ)や太陽光一体で一次エネルギー削減に直結。
長寿命化=最小の環境負荷という価値観が浸透。
昔:
見て覚える徒弟制。図面は手書き、拾いは暗算。
いま:
動画SOP・3D納まり図・部材拾いアプリで新人立ち上げを高速化。
現場監督・設計者・板金・仮設・防水が一体で“納まりレビュー会”。
職人は“叩けるだけ”ではなく、合意形成と記録もできる“外皮エンジニア”へ。
**一次止水(シール・テープ)と二次防水(下葺き・立ち上げ)**の連続性
水返し・水切りの寸法(10mm以上/通気層の確保)
熱伸縮スライドの可動長さと、固定点の位置
見切り・笠木の勾配・かえし、継手部の重ね方向
塩害・工場環境での素材・塗膜ランクの適合
**屋根換気(棟換気・軒先換気)**の有無と有効断面
施工記録:トルク・膜厚・写真・ロットの保存
BIM連携で躯体・防水・板金の干渉をプレで潰す。
現場ロール成形+ドローン計測で“長尺・継ぎ目なし・短工期”を当たり前に。
BIPV/通気外皮/高断熱下地を一体で提案できる“外皮パッケージ”が主戦場に。
デザインでは曲線立平・異素材コンビ(木×金属)、黒系マットなどの“静かな高級感”が継続トレンド。
建築板金は、トタンを叩く職から建物の性能を担う外皮エンジニアへと進化しました。
素材は賢く、工法は精密に、道具はデジタルに。求められるのは、雨仕舞い・熱・風・音・火を横断する総合力です。
次の現場では、
通気と二次防水の連続性、
熱伸縮の逃げ、
記録と合意の“言える化”
の3点から見直してみてください。
美しく、強く、長く持つ外皮は、板金の現場から生まれます。あなたの一折りが、建物の寿命を静かに伸ばしています。
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